脂質異常症(高脂血症)について③ 〜治療〜
- 2025年3月20日
- 内科
皆さん、こんにちは!
今回も脂質異常症について、今回は治療についてお話しします。
脂質異常症の治療は?
基本的にはその他の生活習慣病と同様に、食事療法と運動療法が基本となります。
食事療法は脂質(特に動物性脂肪や飽和脂肪酸)の制限・減量も重要ですが、実は
糖質の制限・減量
がとっても重要です!!
糖質はインスリンというホルモンによって脂肪として蓄積されていきます。
そのインスリンは急激な血糖値の上昇により分泌量が増え、脂肪の合成も増えていきます。
そして、単純な糖質制限と減量だけではなく、食べる順番や早さも大事です。
もう一つの治療、運動療法は脂質値の改善だけでなく、血圧低下やインスリン抵抗性(インスリンの血糖を下げる効果の低下)を改善させる効果もあり、すべての生活習慣病にメリットをもたらします。
その二つでも効果が乏しい場合は、薬物療法を検討します。
薬物療法には内服薬の他に、病態によっては注射治療もあり、2〜4週間に一度の注射を継続していく新しい方法もあります。
具体的な食事療法は?
✔︎ 青魚を積極的に摂る
マグロやブリ、サバ、サンマ、アジ、イワシなどが該当します。この魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)という不飽和脂肪酸が多く含まれ、LDLコレステロールを減らす効果があります。
✔︎ 揚げ物や肉の脂身を控える
魚も揚げたり焼いたりするよりも、刺身や煮付けで食べる方が不飽和脂肪酸が効率よく摂取できます。
でも、高齢の方はある程度の脂肪分の摂取も必要です(LDL-コレステロールは少なすぎるのも問題で、少ないと免疫力低下なんてことも)。
全く脂質を取らないのはダメで、バランスよく食べるのが大事です。
✔︎ 動物性脂肪を控える
バターなどの乳製品の一部には多くの動物性脂肪が含まれます。
クッキーやケーキ、シュークリームなどの洋菓子に多い傾向があります。美味しい洋菓子が世の中にはたくさんありますが、脂質異常症治療の観点からは和菓子の方が適しています。
オリーブオイルや胡麻油、なたね油などの植物性脂肪はLDLコレステロールを下げ、動脈硬化進行を抑える効果があります。(ただし、摂りすぎはダメ)
✔︎ 大豆製品、野菜、海藻、きのこなど食物繊維を多く含む食品を食べる
食物繊維はコレステロールの吸収を抑える効果があります。
私も毎朝ご飯、ネギをたくさん混ぜた納豆、味噌汁(減塩のもの)、わかめとブロッコリーのサラダ(ドレッシングはノンオイル)を食べ、昼や夜はしめじやエリンギ、えのきを使ったおかずを食べるようにしています。
✔︎ お酒は控えめに
アルコールも全く摂取してはいけないわけではありません。
アルコールは20〜40gくらいであれば許容範囲です。
ビールなら500ml 1本、日本酒なら1〜2合、ワインならグラス1杯くらい。
アルコールを少量で楽しみたいなら、1杯目を30分くらい時間をかけて飲んでみましょう。
いい感じに酔いが回ってくるはずです。
✔︎ 食べる順番を意識する
最近よく耳にすると思いますが、食べる順番も非常に大事!
野菜や海藻→主菜→炭水化物
の順番で食べましょう!一説では、炭水化物は食事を始めて5分後から食べるようにすると良い!という話もあります。
これは最初に炭水化物を摂取することによる血糖値の急激な上昇、インスリンの急激な分泌を防ぐ目的があります。
✔︎ 早食いをしない
これも急激な血糖値の上昇とインスリン分泌を抑える目的です。
よく噛んで、時間をかけて食べましょう。
食事のメニュー選びの時に、ほんの少し自分の体のこと、健康のことを考えてみましょう。
小さな積み重ねが健康に直結します。
私の尊敬する内科の先生でこんなことを言っていた先生がいます。
「一食入魂!!」
一食一食を大事にするってことですが、食事の時間も内容も本当に大事なことだと思います。
具体的な運動療法は?
1日30分以上の有酸素運動を可能であれば毎日、難しければ週に180分以上行うことが推奨されています。
有酸素運動の内容として、速歩、社交ダンス、水泳、水中ウォーキング、サイクリングなどは最適です。
高血圧症の運動療法と同様に、1日30分が難しい場合は、短時間でも良いので毎日継続できるような、少し息が上がるような運動をしていきましょう。
仕事が忙しくて、そんな時間取れるか!という人も多いと思います。
でも、朝15分早く起きてみる、SNSを見る時間を10分削ってみる、それってそんなに難しくないのでは?
テレビやスマホを見ながらだっていいんです。
最近ではインスタやYouTubeでも様々なトレーニングは運動の動画がアップされています。
私もそれを参考に毎日5分は運動するようにしています。
明日からやるようにしよう!じゃないんです。
まずは今日から、とりあえずどんな運動でも良いので始めて3日間を続けてみましょう!!
薬物療法はどんなものがあるの?
スタチンと言われる薬剤が使用されることが多いです。
スタチンには強さがあり、その人のコレステロールなどの数値と、これまでの既往歴などを参考に強さを選択していきます。
スタチンは肝臓で主にコレステロールの合成を抑制する薬剤ですが、その他にも小腸でのコレステロール吸収を抑制する薬剤などもあり、最近では注射剤での治療が行われるケースもあります。
様々な作用のある薬が開発され、治療の選択肢はどんどん増えています。
スタチンは中性脂肪を下げる効果は実はあまり強くなく、中性脂肪を下げるのが強いフィブラートという薬剤を使います。
しかーし!!
高血圧や糖尿病と同様に、薬剤を続けていれば脂質異常症が良くなるわけではありません。
上に挙げた食事療法と運動療法が治療のベースです。
健診で「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」「肥満」などのコメントを見たら!
ぜひ!当院にご相談ください!
次回は、三大生活習慣病の中でも最も厄介な(と個人的には思っている)糖尿病について、お伝えします!