熱中症④ 〜熱中症の治療〜
- 2025年7月10日
- 内科
皆さん、こんにちは!
熱中症に関して、これまで3回にわたってお伝えしてきましたが、最後は治療についてです。
軽症から重症まで、現場から救命救急センターまでの対応方法を簡単にコンパクトにお伝えします。
熱中症の治療とは?
熱中症の最初の回でもお伝えしたとおり、熱中症は脱水症と高体温が病態の中心で、それぞれに伴う色々な症状や病態を示します。
そこで治療の基本は、
脱水の補正 と 体温を下げる
ことです。
脱水の補正とは?
脱水症は単純に体の水分が少ないだけではなく、ナトリウムなどの電解質の異常も同時に来したり、脱水によって生じた脳や腎臓の機能が悪くなっていることもあります。
もちろん軽症から中等症、つまりI度とII度は
経口補水液を飲んだり、点滴をおこなったりすることで、水分と電解質を補充するだけで良くなることも多いです。
ちなみに、
同じ量の経口補水液を口から飲むことと点滴で投与した場合、体をめぐる水分の増加量は口から飲む方が圧倒的に多いんです。
よく、口から飲むことができるのに点滴してほしいという方がいますが、針を刺す痛い思いをするだけで、効いた感じがするのは正直言って気持ちの問題とも言えます。。。
さて、重症以上、つまりIII度やIV度の場合は、
脳や腎臓などの臓器障害も起こしていることも多く、水分や電解質の補充を行うだけではなく、障害された臓器に対する追加の治療も必要となります。
脳がダメージを受けていて意識が悪い時は人工呼吸器が必要となることもありますし、腎臓のダメージが強い場合は人工透析などが必要となることもあります。
また、もともと心臓や肺、腎臓の機能が悪い場合も多く(リスクの回でも説明した通り元々心臓や肺が悪い人が熱中症にもなりやすいんです)、補充する水分量の細かい調整が必要なことも多いです。
体温を下げるとは?
熱中症では、文字通り、熱に中った(あたった)状態ですので、その熱を逃してあげる必要があります。
つまり、体を直接冷やして体温を下げることが重要です。
そして、できるだけスピーディーに体温を下げる必要があります。
IV度のような重症熱中症の場合は特に、高体温が長く続くと脳などの中枢神経、肝臓や腎臓などの臓器がどんどん障害を受けていきます。
なので、迅速に冷やす必要があるのです。
アメリカの救急隊の中では、
Cool First, Transport Second!
という方針が反映されてきています。
つまり、搬送も大事だが、その前に体を1秒でも早く冷やして高体温が続くのを防ぐという考え方です。
最も一般的なのは、体に霧吹きなどで水をかけて、風をあてることで気化熱を奪うことです。
他にも、点滴で冷たい水を血管の中に流したり、血管の中に直接冷却機能のあるカテーテルを入れて冷やしたり、はたまた鼻や口から胃まで管を通して、そこから冷水を入れて出してを繰り返す方法などがあります。
正直、どれも結構地道な方法です。体温が下がってくるのも結構ゆっくりです。
そして、最近になって徐々に普及してきているのが、冷水浸漬という方法です。
なかなかおっかないことするじゃん!って思う方も多いと思いますが、その通り!
体ごと冷水プールや冷水の浴槽に入れて冷やす方法です。
これが一番冷却速度が速いことが示されています。
ですので、一部の救命救急センターでは、実際に介護用などの浴槽や簡易プールなどを用いて急速に体を冷やす方法が行われており、その安全性と有効性が示されています。もちろん安全性の確保のため、設備やマンパワーは必須ですが、、、
目標は深部体温が38度に達するまでです。
まだ高くない?!と思うかもしれませんが、脳などの悪影響が軽減するのが38度なのです。
ここまで救命救急センターなどの医療機関で行われる治療方法を説明しましたが、では現場ではどのようなことをすれば良いのか?
治療の原則は病院で行われる治療と同じです。
水分を取ってもらうことと体を冷やすことです。
水分の取り方は、前回の予防の時にお伝えした通り、ベストはORSを飲むことです。
子供の場合は、飲ませてあげる必要があるかもしれません。
大人の場合は、自分でペットボトルの蓋を開けて飲み、吐かないこと、そして自分で蓋を閉めることができることを確認できればなおよいです。
そうすることで意識レベルも同時に確認できますし、飲むことができるのか点滴が必要なのかを判断することができます。
そして喉が渇いたから飲む、飲ませるのではダメ!
5〜10分くらいに1回のペースで少量ずつしっかりと飲むことが大事!!
体を冷やすには、
まずはエアコンの効いた室内や風通しの良い日陰など涼しい場所に移動させます。この時に絶対歩かせていけないわけではないですが、できれば歩かずに移動できればベターです。
次に、着ている上着を脱がせます。
倒れたりしないように、安全な場所で横になってもらいます。頭の下にタオルなどを敷いて保護するとよいです。
結構忘れがちですが、靴も脱がせましょう。
そして、あおいだり冷房の風を送ったり、場合によりホースを水道に繋ぎ全身に水をかけてでも冷やしていきます。
水をかけるなんてそんな野蛮で可哀想なこと、、、
と思うかもしれませんが、III〜IV度の重症な熱中症が疑われる場合は、ためらってはいけません。
患者さんが寒いという意思表示ができるようになるまで続けましょう。
4回にわたり、熱中症についてお伝えしてきました。
熱中症の重症度、どんな要因があると熱中症になりやすいか、予防方法や治療方法などなんとなくお分かりになりましたか?
自分が熱中症にならないよう、そして家族や友人、周囲の人がならないようにしっかりと対策していきましょう!!
夏ならではのイベントもたくさんあります。
万全の体調で楽しんじゃいましょー!!
最後に、熱中症は何科が見る病気なの?と疑問に思う方も多いでしょう。
はっきり言いますが、一番見ているのは救急科・救命救急センターの人達だと思います。
ある意味、私の専門分野?!かもしれませんね。
さて、次回は、さらに私の専門でもあります頭痛についてお伝えしていきます。
頭痛は国民病でありながら医療機関を受診する人がまだまだ少ない病気です。
ぜひ、参考にしてみてください!お楽しみに〜!!