頭痛⑥ 〜片頭痛の治療2〜
- 2025年8月12日
- 内科
皆さんこんにちは!
さて、前回の片頭痛の急性期治療に続いて今回は予防療法についてお話しします。
予防療法とは?
簡単に言えば、頭痛の頻度を抑えるための治療のことです。
予防療法を的確に行うことで、
痛みの頻度だけでなく、痛みの強さを抑えることもでき、痛みが続く時間も短くすることができます。
片頭痛に限らず、緊張型頭痛も同じですが、
痛みがある時は痛み止めを使用することは間違えではありません。
痛みの程度にもよりますが、片頭痛は特に仕事や家事などに影響を及ぶほどの頭痛が生じることが多いため、その場で痛み止めをしっかりと服用することは正しい判断です。
しかし、その使用頻度が多い場合は別な問題が生じるのです。
薬物使用過多による頭痛というものを引き起こしてしまう可能性があるのです。
薬物使用過多による頭痛とは?
以前は薬物乱用頭痛とも言われていました。
おおよそ10回程度を目安とすることが多いですが、
痛み止めを使用する頻度が多い場合に、頭痛になりやすくなってしまう状態のことです。
細かい病態の原因はまだ解明されていませんが、鎮痛剤をたくさん使うことにより、頭の中の痛みを感じる閾値というものが下がってしまい、本来少しの痛みであっても強く痛みを感じやすくなってしまいます。
それにより、また薬を早く飲みたくなり、そのためにまた痛みの閾値が下がってしまい、また早く薬が欲しくなる、、、
といった悪循環をきたしてしまいます。
この薬物使用過多による頭痛は実は治すのはかなり大変で、予防療法を十分に行い痛み止めの使用を控える必要まであり、人によっては入院を要することだってあるんです。
そうならないためにも、早めに予防療法を始める必要があるのです。
予防療法を始める目安は?
ガイドラインによると、概ね月に3回の頭痛がある場合は始めた方が良いとされています。
そんな少ないのに始める必要があるの?と思われる方もいるかもしれませんが、
この頻度は最低でも週に1回は頭痛があるということです。
こう考えると、あの不快な頭痛が週に1回はあるって結構キツくないですか?
予防療法はどのような治療なの?
予防療法は、基本的には毎日予防効果のある薬を飲んでいく治療です。
薬の種類は様々で、高血圧やてんかんなどに使われる薬がほとんどです。
以下に代表的なものを列挙します。
✔︎ ロメリジン 高血圧に使われる薬です。
✔︎ ベラパミル 高血圧や不整脈に使われる薬です。
✔︎ プロプラノロール 高血圧や不整脈に使われる薬です。
✔︎ バルプロ酸 てんかんに使われる薬です。
✔︎ アミトリプチリン 不眠症やうつ症状に使われる薬です。
このほかにも、多数の予防療法に使用される薬がありますが、保険適応などの問題があり使用できないケースが多いです。
これらの薬を、患者さんそれぞれの状態に応じて使っていきます。
例えば、高血圧もある片頭痛の人はロメリジンから始めてみる。といった具合に。
ちなみに、緊張型頭痛の場合は、アミトリプチリンを予防療法として使用します。
予防療法の効果はどれくらいで判断するの?
予防薬を開始してから、まずは2〜3ヶ月で効果があるかを判断します。
予防療法を始めて1ヶ月になるけど効果がないからといってやめてしまうのはダメ!
また、薬は少量から始めることが推奨されており、1ヶ月ごとくらいのペースで増量もしていきます。
まずは医師を信じて、2〜3ヶ月は内服を継続してみましょう!
それでも効果がない場合は、薬を変更したりして判断します。
予防療法を適切に行うことで、片頭痛が月に1回くらいになって喜んでくださる人もたくさんいます。頭痛がほとんどなくなった人もいます!
頭痛診療を変えた新しい薬!
上の通り、予防療法のおかげで頭痛は数ヶ月から1ヶ月に1回くらいまで減った!
という人もたくさんいます。
しかし、薬を数種類飲んでいるのに全然頭痛が治らない、慢性片頭痛になってしまっているという方も中にはいます。
そんな中、2021年に頭痛診療が大きく変わりました!
それは、片頭痛に特化した予防薬が発売されたのです。
それが抗CGRP抗体薬、抗CGRP受容体抗体薬と言われる注射薬です。
片頭痛の最初でお伝えした通り、片頭痛にはCGRPという神経伝達物質が痛みの神経を刺激してしまうことで症状が発現します。
このCGRPという物質が作用するのを抑える薬です。
この効果は非常に絶大!!
これまで色々な予防療法もおこなったけどよくならなかったという患者さんをたくさん救っているのです。
抗CGRP抗体薬として
✔︎ ガルカネズマブ(エムガルティ®️)
✔︎ フレマネズマブ(アジョビ®️)
抗CGRP受容体抗体薬として
エレヌマブ(アイモビーク®️)
という薬があります。
この薬は注射薬であり、おおよそ月に1回のペースで注射を行います。
ですから、効果があれば毎日薬を飲む必要もなくなる場合もあります。
そして、使い方がしっかりと理解できるようになれば、自宅で自己注射もできるようになります。
しかし、問題点もあります。
それは、お高いこと!
薬代で1ヶ月に10,000円くらいしてしまいます。
しかし、上にも書いた通り、いろいろな予防療法で効果のなかった人が注射を行って本当に頻度が減り、日常生活も頭痛を心配することなく送れるようになったという事例もたくさんあります。
当院でも注射治療の導入は可能で、慣れてくれば3ヶ月程度で自己注射に変更することも可能です!
予防療法で効果の実感がない方は注射の治療を始めてみませんか?!
次回は、頭痛体操についてお話ししていきますね!